☆×5

冒頭は、まず鮮やかな銀行強盗のシーン、そして闇取引の現場を襲うシーン、それぞれで二人の主役、ジョーカーとバットマンが華麗に登場!

中盤(75分あたり)でのカーチェイスの場面、大型車がぶつかり、パトカーがひっくり返り、しかもトンネルの中なので色彩がオレンジ色で綺麗、その中で護送中のデント検事を巡り、ジョーカーとバットマンが闘う。ヘリコプターもトレーラーもひっくり返ります!見ていて感覚が麻痺しそうですが、現実には中々お目にかかれない瞬間、凄いな。

この作品の魅力は、アメコミの世界を現実世界にまで引き込んでいる説得力、にあると思います。しかし、やはりまず、直接五感に訴える力、目感覚と耳感覚でしょうか。
近代都市を想像させる抑え目なダークトーンの色使いとともに、作りこんだ背景や美術などが、凝っているけど、画面全体で見るとバランスがよく、実にスッキリしている。眼に心地よいです。
そして、なんと言っても音だと思います。
音はハンスジマーの音楽が静かな部分と激しい部分とが実に弾力があり、展開とマッチしていて素晴らしい効果を生み出しています。それに伴ってジョーカーの高いが張りのある軽快な声、バットマンの低くて芯のある地獄の底から響くような声、絶妙の対比。

そして、よく作中にも出てくる「人の心の闇」。終盤で、登場する皆さんが見事乗り越えてくれるのですが、誰しもが持つ利己主義、自己主義、人事ではないですよね。自らの事のみ優先すると、この世は醜き地獄。しきりにそこをジョーカーは突いてきます。その対極にある存在がバットマンで、彼が終盤で出した答えです。

最後に、見ていて涙さえ出てくる、ジョーカーというキャラクター。上述したように人の闇を引き出そうとする、どうしようもない悪の権化です。ですが、非常に雄弁であり、心に深い傷を持つ男である事も判ります、そこが、観ている者にとっては、もどかしく切ないのです。清々しささえ感じるのは、私利私欲で動いていない事(もちろん狂気ではありますが)、103分頃に、獲得した札束を燃やす場面は象徴的です。
シェイクスピア劇でいう道化役にして敵役、この作品で伝えたい事を明確にしてくれる、極めて重要な役どころ、見事演じきりました。ヒースレジャー・・・不慮の死が惜しまれますね。

この作品は、己を超えて志に殉ずる、武士の姿にも通じます。映像と音の質、そして内容の深さ、好きです!